住宅ローンが払えなくなった!
いったいマイホームはどうなるのか

きちんと返済をしていた住宅ローンが、会社の業績が悪化した影響で払えなくなったとすれば、いったいマイホームはどうなってしまうのでしょうか。この記事では、返済不能という最悪のシナリオに陥ったときのマイホームの行方について解説します。

ここから銀行とのやりとりが始まる

住宅ローンの引き落としの日に、所定の金額を入金していない場合、1週間以内に銀行から電話が入ります。平日ですから、職場もしくは携帯電話にかかってきます。

口調は穏やかで、けっして咎めるようなことはありません。「うっかりミスですよね」といったニュアンスです。住宅ローンが引き落とせない事態は、それほどレアケースということではなく、本当に入金を忘れていたということが少なからずあるからです。

当然の対応として、お詫びをして、通常は「必ず入金します」と答えることになります。そうすると、すかさず銀行員は入金予定日を尋ねてきます。そこで何日以内に入金すると答えれば、電話は終了します。

しかし入金する裏付けもないのに、入金なんてできません。約束した期日を過ぎると再び銀行から電話がかかってきます。この辺りから銀行員は、心の中でイエローカードを振りかざしています。

自宅に督促状が届く

翌月も滞納という状態だと、銀行から自宅に督促状が届きます。この頃になると、銀行からの電話を無視してしまうことに慣れてしまいます。感覚がマヒしてくるといった方が近いかもしれません。正直に電話を受けても何も約束できないのですから、人間の心理として受けなくてもよいと合理化してしまうのです。

自宅に届くのは、法的に何の効力のない文書ですが、これから起こる事態を警告しています。内容は、次のようなものです。

  1. 返済期限までに指定の口座に入金されていません。
  2. このままだと「期限の利益」を喪失しますよ。
  3. この件の入金期限を〇月〇日とします。
  4. 入金がこの文書と行き違いになっていたらお許しください。

「期限の利益」とは、返済期日が来るまでは、分割で返済できる債務者の権利です。ただしこの権利は、原則一度でも返済期日に遅れると喪失します。

ついに銀行も本気モードになる

滞納を3カ月も続くと、銀行も本気モードになります。住宅ローンの窓口だった支店の手を離れ、本店に置かれた督促専門の部署の案件になります。

前回は、封筒に「重要」と朱印が押された普通郵便でしたが、今度は配達記録郵便や内容証明郵便で送られてきます。ここに同封されている書面は「期限の利益喪失通知」です。「〇〇月〇〇日までに滞納分が完済されない場合は、期限の利益が喪失します」とはっきり宣告されます。

この通知を送付してきた目的は、残金の一括返済ですが、この目的が達成されないことは当然銀行も織り込み済です。真の目的は、この文書をもって、回収手続を粛々と進めることと、残金に延滞利息を発生させることにあるのです。

債権者が保証会社に移る

住宅ローンの借り入れには、最近では保証会社を保証人にしているケースがほとんどです。このため期限の利益が喪失すると、銀行は保証会社に弁済するよう求めます。これにより、債権者は銀行から保証会社に移されます。

しかしこれは、滞納者の立場からすると、返済窓口が銀行から保証会社に変わっただけのことなので、経済的にも心理的にも大きな変化はありません。

ここまできたら任意売却を選択するのが最善手

このような状況になると、任意売却が最も有効な手段です。任意売却とは、住宅ローンの返済ができない住宅を売りに出して、その売却金額で残債を一括返済する手法です。

任意売却には銀行などの債権者の同意が必要になります。しかし銀行が必ず任意売却に合意してくれる保証はありません。銀行の立場からすれば、任意売却で妙に問題がこじれるよりは、競売にした方がいいこともあるからです。

銀行に任意売却の同意をしてもらうためには、任意売却を専門に扱っている不動産会社に仲介を依頼するのが最も確実です。物件の査定をして、いくらで売れる見込みがあるといった資料とともに銀行に任意売却の申し出をすれば、同意してもらえる可能性は高くなります。

競売になれば最悪のシナリオ

しかし任意売却という耳慣れない手法を思い浮かぶ人はなかなかいません。どうしようかと手をこまねいていると、その間に銀行は粛々と競売の手続きを進めていきます。

競売をすることになれば、裁判所が事務を進めていきます。裁判所が競売にかかった住宅の調査をして、不動産鑑定が行われた後に、インターネットを通じて、競売物件の情報が公開されます。これにより、近所の人に住宅ローンが返済できなくて、競売にかかったことを知られることになります。

競売は入札方式で行われます。入札の期間中に参加者が、それぞれ値をつけた札を投じるのです。

競売は任意売却よりも低い金額で落札されるのが一般的であるため、競売で売却しても、完済できないことがあります。

その場合には、他の資産など換金できそうなものが差し押さえられていきます。通帳を隠しても意味はありません。簡単に調べがつき、たちまち差し押さえの対象になります。

もし負債者が会社員であれば、支払われる給料の4分の1を上限にして、給料支払い前に差し引かれる可能性もあります。

競売で親戚を頼れるか

任意売却という手法を理解していながら、あえて競売の道を選ぶこともあります。裕福な親戚に物件を落札してもらい、引き続き家に住めるようにしようという目論みからです。

たしかに任意売却だと、購入金額が低いと銀行が同意してくれません。だから相場よりも安い金額で落札できる方法を選択するのです。

しかし、これには大きな落とし穴があります。つまり親戚が落札できる保証がどこにもないということです。近年、競売物件は人気になっており、専門の業者が常に情報を入手しています。廃屋ならともかく、住宅ローンを返済中の経年の浅い住宅は人気物件なので、高い競争率です。しかも入札は1発勝負なので、確実に落とせる保証はまったくありません。

ここで第三者が落札すれば、名実ともに家を失うことになります。

この段階で競売を止められるのか

競売をすることが決定すると、裁判所から厳めしい封筒で「競売開始決定通知」が届きます。

この段階になって、競売を取りやめて任意売却を選択することは可能なのでしょうか。

競売は金額を書き込んだ札を入れて、最高価格を入れた人が落札者になります。この入札期間が終わると、入札札を開ける「開札の日」というものが控えています。この「開札の日」の2日前までに、債権者が競売の申し立てを取り下げれば、競売は中止されます。

競売開始決定通知が届いてから「開札の日」までの期間は、5~6カ月です。この期間内に、任意売却専門の不動産会社を探し出して、関係がすっかり悪化した金融機関から任意売却の合意をとったうえで、買受人との契約まで漕ぎつけてようやく競売中止に漕ぎ着けることになるのです。まさに綱渡りのような過密スケジュールです。

確実にすべてがうまく運ぶ保証はありません。やはり早い段階で、任意売却の選択をしておいた方がよいということです。

まとめ

住宅ローンの返済に窮すれば、誰しも焦ってしまい冷静な判断を欠いてしまいます。それでもただ放置しているだけでは「競売」という最悪のシナリオに陥ってしまうばかりです。

物件を購入してくれるのは、一般の買主だけではありません。買取専門の不動産会社が高値で買い取ってくれる可能性があります。任意売却が避けられない事態になったら、急いで買取の問い合わせをして、いくら売却できるのかを把握するのも有効な解決の手立てになりえます。