「囲い込み」に注意!
不動産が売れない最大の原因かも

家の売却を不動産会社に頼んだのに、何カ月経っても売れる気配がないと感じたら、「囲い込み」が原因かもしれません。「囲い込み」とは、仲介の不動産会社が、そもそも売却をする気がない状態のことです。でも仲介手数料が入るのに、どうして売却しようとしないのでしょうか。この記事では、不動産が売却できない原因になる「囲い込み」の実態について解説します。

不動産売買のしくみ

「囲い込み」について理解していただくために、まず不動産売買の仕組みを押さえておきましょう。これで不動産会社が、どうやって利益を得ているのかが分かります。

不動産会社には売買仲介手数料が入る

不動産の売買取引では、売主、買主、仲介がいます。仲介は売主側にも、買主側にもついていて、契約が成立すると、仲介手数料がそれぞれの不動産会社に入ります。

不動産の仲介手数料は宅建業法に定められています。ここで定めているのは上限額ですが、ほとんどの不動産会社は、この金額を仲介手数料としています。

取引額が400万円以上の仲介手数料は、「売買価格×3%+6万円+消費税」で計算できます。たとえば売買価格が1,000万円の場合は、次の計算になります。

1,000万円×3%+6万円+消費税=396,000円

この金額を売主と買主が双方の不動産会社に支払います。

不動産仲介のしくみ

このように売主側の仲介会社と買主側の仲介会社がそれぞれ仲介手数料をもらう取引を、不動産の業界では「片手仲介」とか「片手取引」と呼んでいます。これが最も一般的な方法です。

売主側の仲介会社は販売を依頼された場合、レインズ(不動産業者間のネットワーク)に登録をして情報を公開します。これにより他の不動産会社が検索することが可能になります。

一方、売主から仲介を依頼された不動産会社が自らの力で売主を見つけた場合は、売主と買主の双方から仲介手数料をもらうことになります。これを不動産業界では「両手仲介」とか「両手取引」と呼んでいます。

片手仲介の手数料が396,000円だったのが、2倍の792,000円になるのですから、不動産会社にとっては、とてもありがたい取引だといえます。

両手仲介は正当な業務

不動産仲介会社が売主から物件の販売依頼を受けた物件を営業によって直接買主を見つけて契約まで至ると、両手仲介となり仲介手数料を双方から収受することとなるので、仲介会社としては大きな収益になります。

もちろん、企業努力で自らお客様を見つけて売主と買主の仲介をすることは、まったく問題がありません。また売主側の業務と買主側の業務はそれぞれ業務の質が違うので、両手仲介だからといって、安直に手数料を割り引くことはできないのです。

しかし時として「両手仲介」が悪く扱われることがあるのは、悪名高い「囲い込み」と深い関りがあるからです。

囲い込みとは何か

それでは「囲い込み」とは、いったいどんな取引形態なのでしょうか。この項では、囲い込みについて解説をしていきます。

囲い込みとは

不動産仲介会社は、売主から売却を依頼されると、その情報を広く公開して販売を促進します。このため、自らが買主をみつけるよりも、他の不動産会社からの問い合わせを受ける可能性の方が高くなります。

他の不動産会社から問い合わせがあった際に、実際にはまだ購入希望者が存在していないのにも関わらず「その物件は、現在商談中です」といって、問い合わせてきた不動産会社と接触を持たないようにするのが「囲い込み」のやり口です。

売却依頼を受けて自社で買主を見つけることができれば、両手仲介となり仲介手数料を売主と買主から収受することができます。両手仲介は、それぞれ独自の業務があるので双方から仲介料をもらうことに問題はありません。しかし、売主から売却依頼されたあと、両手仲介を優先するために情報を広く公開せず、自社の顧客だけに紹介することがあります。「囲い込み」は売主に有利な売却ができる可能性を摘み取り、状況によっては売却価格を下げて売ることになるため、売主の利益を損ねる点に問題があるのです。

囲い込みをするのは専属専任媒介契約と専任媒介契約

宅建業法では、売主が不動産業者に仲介を依頼する際に「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類の方法を定めています。

このうち「専属専任媒介契約」と「専任媒介契約」は、他の不動産会社に仲介依頼ができない仕組みになっています。その分、レインズへの登録義務や定期的な報告義務など積極的な売却活動を展開してもらえるという売主側のメリットがあります。

しかし、両手仲介をしたいという思惑がある不動産業者は、極力他者からの問い合わせを排除するために「囲い込み」を行うのです。

売却価格が安くなっても利益がある

いくら両手仲介ができるといっても、物件が売れなければ、1円の利益もないではないかと考える人もいることでしょう。でも不動産会社は、他社からの紹介を拒む一方で、なぜか売れるための努力もします。つまり売主に売却価格の引き下げを持ち掛けるのです。売却価格を引き下げるだけで、売却できる確率は高くなります。

不動産会社の収益はどうでしょうか。たとえば3,000万円の売却価格を設定していた不動産を2,500万円で売却したとすると、仲介手数料は、96万円から81万円に下がります(税抜)。しかし両手仲介だと、162万円の利益がありますから、仲介手数料が多少下がっても両手仲介する道を選択する不動産会社があるのです。

売れ残る心配はない

しかも不動産会社は、売れなかった場合の最終手段を持ち合わせています。取引のある工務店に購入を持ち掛けるのです。工務店としても相場よりも相当安い価格で購入できるというメリットがあります。

しかも工務店が購入した物件は、リフォーム後に売り出す際にもう一度売主側の立場で仲介ができ、さらに自らの手で買主を探し出せば、ひとつの物件で4度仲介手数料が入ってくるのですから、とてもうまみのある取引になるのです。

大手不動産会社が実行していることも

ここまでの話を読むと、そんなことをやるのは、町の片隅にある小さな不動産会社というイメージを抱く人もいるかもしれません。しかし、この手法は大手不動産会社で展開されているのです。

もし町の不動産会社の仲介で、いつまでも売れなかったら、「販売能力がないのでは?」と疑いの目をむけるはずです。しかし大手不動産会社の爽やかな営業マンから「うちの会社で売れなかったら、どこの会社でも売れませんよ」と営業トークを聞かされたら、たしかにそうだと売主は妙に納得をしてしまうのです。

囲い込みされないためにはどうすればいいのか

それでは、巧みな囲い込みに陥らないようにするにはどうすればいいでしょうか。ここでは、囲い込みを防ぐ方法を解説します。

レインズ登録状況を確認する

専属専任媒介と専任媒介は、レインズへの登録義務があります。不動産会社は、レインズに登録すると証明書をもらうことができます。証明書には登録番号と確認サイトのアドレスが記載されているので、登録番号を入力すると売主はレインズへの掲載内容を確認することができます。

定期的な報告をもらう

専属専任媒介契約の場合は1週間に1度、専任媒介契約の場合は2週間に1度、売主への営業活動の報告義務があります。営業活動が具体的にどのように行われているか報告を受け確認をしましょう。

まとめ

「囲い込み」は、売主側でしっかりと注目していないと、なかなか見抜けないことがあります。相場どおりの価格設定で売却活動を始めて、1カ月以上経っても1件の問い合わせもないという状況であれば、「囲い込み」を疑った方がいいかもしれません。

営業活動の宝報告書にもしっかり目を通すとともに、営業担当者の口から直接動向を確認する作業も重要です。不利益な扱いを甘んじて受けて、売却価格を下げざるを得ない状況にはけっして陥らないようにしてください。