抵当権の抹消手続きは本人申請でチャレンジしてみよう!!

住宅ローンを利用すると、融資先の銀行が抵当権を設定します。これは住宅ローンを貸すための担保ですから、ローンを完済すれば抹消することができます。ただし、この抹消手続きは、銀行が行ってくれるのではなく、借りた側で行なわないと、いつまでも残ったままです。でも専門家に依頼すると報酬の支払いが発生します。それでは抵当権の抹消手続きを自分ですることはできないのでしょうか。この記事では、本人申請で抹消手続きをする方法について解説します。

抵当権とは何か

そもそも抵当権とは、何であるのかを押さえておきましょう。抵当権は、住宅ローンを融資する代わりに不動産を担保にとるという意味合いがあります。

もしローンの返済が不能になった場合、融資した銀行は抵当権を行使して、不動産物件を競売にかけて換金をするのです。

不動産登記には、住宅ローンの担保として○○銀行が抵当権を設定している旨が記載されています。これにより、第三者にも抵当権が設定された物件であることが分かるのです。

住宅ローンを完済したらどうなる

住宅ローンを完済したら、たとえ不動産登記に抵当権の設定事項があっても、銀行がこれを行使することはありません。とはいえ、完済しても、銀行が抵当権抹消の手続きをしてくれるわけではありません。せいぜい司法書士を紹介してくれるくらいの手助けしかしてくれないのです。

抵当権を残したままだとどうなる

抵当権が設定されていても、法律上は売却をすることはできます。しかし、たとえ完済した事情は分かっていても、抵当権の事項が記載された物件を買う人は、ほぼいません。

売却代金でローンを完済する場合は?

ところが、不動産を売却した代金で住宅ローンを完済しようとすると、抵当権が設定されたままで、所有権を移転しないといけないことになります。

この場合は、所有権の移転と同時に抵当権抹消を実施しないといけないので、「売買代金の支払い」「所有権の移転登記」「抵当権の抹消」をまとめて行います。売主、買主、銀行の三者ともにミスは許されない状況ですので、さすがにこのケースでは、抵当権抹消手続きは司法書士に任せないと、他の人が納得をしません。

抵当権の抹消手続きにチャレンジしよう

このため本人申請で抵当権の抹消手続きができるのは、自己資金で住宅ローンを完済したときに限定されます。

まず抵当権の抹消手続きの流れから解説していきましょう。

登記情報を確認する

現在の登記情報が分からない場合、まず登記情報を確認します。以前は、法務局の窓口で確認していましたが、現在は法務局のオンラインシステムで確認することができます。ここで「登記事項証明書」を取得します。

登記事項証明書では「権利部(甲区)(所有権に関する事項)」を確認します。「権利者その他の事項」に記載されているのが現在の所有者です。

婚姻によって姓が変更されている場合や、住所が変更されている場合は、現在の氏名・住所に変更する必要があります。この手続きも自分で行うことは可能ですが、煩雑だと感じたら司法書士に依頼した方がいいでしょう。

銀行から必要書類を受け取る

法務局に提出する必要書類を銀行から受け取ります。銀行は、住宅ローンを完済したからといって、必ずしも積極的に書類を渡してくれるわけではありません。こちらが要求してようやく出してくれることもあります。

銀行から受け取る必要のある書類は次の4種類です。

登記識別情報または登記済証

抵当権を設定した際に法務局から発行される書類です。再発行ができない書類なので、取り扱いには特に注意が必要です。

登記原因証明情報

「解除証書」「弁済証書」という書類です。これによって抵当権を抹消する理由を銀行が証明します。

資格証明情報

銀行が法人であることを証明する書類が必要です。多くは、銀行の登記事項証明書を用います。

登記事項証明書は、有効期間が3か月以内です。期限が切れても自分で再取得することは可能ですが、合併などで名称変更があった場合は、それを証明する書類も必要になってきますから、できる限り期限内に手続きを終えましょう。

代理権限証明情報

これは委任状です。抵当権の抹消登記は、本来、所有者と銀行が共同で行うのですが、その手続きを所有者に委任するという書類です。

登記申請書を作成する

金融機関からもらった書類とともに、申請書を作成し提出します。

  • 登記の目的  抵当権抹消(順位番号後記のとおり)
  • 原因  令和○年○月○日解除(又は「弁済」等)……記入する日付は、ローンを完済した日です。「解除」にするか「弁済」するかは、銀行から受け取った「解除証書」や「弁済証書」に記載されているとおりにします。
  • 権利者……所有者を記載します。共有名義の場合は共有者をすべて記載します。
  • 義務者……銀行の代表者名を記載します。
  • 添付情報……登記識別情報、登記原因証明情報、会社法人等番号、代理権限証明情報などを記載します。
  • 登記識別情報を提供することができない理由(不通知、失効、失念、管理支障、取引円滑障害、その他)……登記識別情報を用意できない場合、ここにその理由を記載します。
  • 登録免許税……1物件につき1,000円です。一戸建てだと、土地と建物それぞれで2,000円かかります。土地が分筆されている場合は、それぞれの筆が1件としてカウントされます。
  • 不動産の表示……登記事項に書かれている内容を正確に記載します。

法務局に提出する

提出先は、不動産物件を管轄する法務局です。法務局のホームページで担当を確認することができます。

提出する書類の中には、原本を銀行に返却をすることを前提にしたものがあります。そうした書類は、コピーをつけて提出してください。

費用を支払う

抵当権の抹消登記費用は、一つの不動産あたり1,000円です。一戸建ての場合だと、土地と建物それぞれ一つになります。土地が分筆されている場合は、それぞれの筆ごとに1,000円がかかります。

支払は、法務局内で収入印紙を購入します。最終的には、登記申請書に貼るのですが、受理されないこともあるので、提出前に法務局の担当者に書類を確認してもらいます。

提出後の流れ

法務局に提出した後、登記が完了するまでしばらく日数を要します。完了する日時は予め教えてもらえますので、その日時以降に受け取りにいきます。

司法書士に依頼した方がいいケース

ここまで、本人申請で抵当権抹消手続きを行う方法を説明してきましたが、状況によっては、専門家である司法書士に手続きを任せた方がいいケースもありますので紹介しましょう。

法務局が遠方にある

対象となる不動産が居住地から離れている場合、抵当権抹消登記を管轄する法務局も遠方に位置することになります。この場合、手間や費用を考えると、司法書士に依頼した方が、メリットがあります。

また居住地の不動産であったとしても、法務局が開庁している平日の日中に仕事などの都合でいけない場合も、司法書士へ依頼した方がいいでしょう。

住所変更などの他の手続きがある

不動産登記は、入居前に慌ただしく行われます。住民票を移していなかったり入籍をしていなかったりした段階で登記がなされていると、住所が現状と異なったり、氏名が旧姓のままだったりすることがあります。

こうした場合、抵当権抹消手続きの前に変更手続きを行う必要がありますから、手続きが煩雑だと感じたら、抵当権抹消手続きと合わせて司法書士に依頼した方がいいでしょう。

まとめ

長年かけて返済した住宅ローンですが、完済後の銀行の対応が必ずしも親切だとは限りません。ある程度、こちらが催促をして進められることもありますから、どういった書類が必要になるのか、しっかりと把握をしておきましょう。

抵当権がいつまでも登記に記載されていると、いろいろなデメリットがあります。また昨今の経済情勢で、銀行も名称を変えたり、合併をしたりといったことも十分に想定できます。

抵当権の抹消手続きは、住宅ローンを完済した当事者が元気なうちにすみやかにおこないましょう。