実家の土地活用をどうする!
サブリース契約でマンション経営は成功するのか?

空き家となった実家の土地活用は難解な問題です。たとえば売却は困難だからと、不動産会社からマンション経営を勧められることがあります。「サブリース契約」をすれば、すべて不動産会社に任せて何もしなくても安定した収入を得られるというのですが、実際のところどうなのでしょうか。この記事では、実家の土地の有効活用として、サブリース契約でマンション経営をした場合の将来の行方を解説します。

サブリース契約とは

「サブリース」とは、不動産会社がオーナー(建物所有者)から賃貸住宅を一括で借り上げ、第三者に転貸して建物管理を行う業務形態を指します。これを実現させるためにオーナーと不動産会社の間で結ぶ賃貸借契約を「サブリース契約」と呼びます。

サブリース契約を結ぶことでオーナーは、空き部屋対策、入居者サービス、家賃回収、賃借人とのトラブル対応といったすべての管理業務から解放されます。不動産会社が、管理業務や入居者の選定などの賃貸経営を統括することになるのです。

オーナーと不動産会社は、大家と借家人の関係になるので、不動産会社から家賃保証額という名の「家賃」が支払われます。この際の「家賃」は、全室の家賃の80%~90%相当額に設定されています。このため、空室率にかかわらずオーナーが得る収入は一定です。

サブリース契約をめぐるトラブル

サブリース契約は、マンションが遠方にあっても、管理をすべて不動産会社に任せられるので安心して経営できます。直接管理をする場合と比べて収入は減るものの、管理業務の煩わしさから解放されることを考えたら、サブリースは利点があるように思えます。

しかし現実には、サブリースに関するトラブルが続出しており、ひとつの社会問題にすらなっているのです。実際にどのようなトラブルが発生しているのかみていきましょう。

賃料が下げられてしまう

サブリースを巡るオーナーと不動産会社の間のトラブルが後を絶たないため、国土交通省は消費者庁と連携をして、2018年3月に「サブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルにご注意ください」という注意喚起を促す文書を公表しました。

この文書では「近年、賃料減額をめぐるトラブルが発生しています」と忠告をしています。きちんと契約を結んでいるはずなのに、どうしてこのようなトラブルがおきるのでしょう。

原因のひとつに「家賃30年保証」「契約10年更新」と聞かされていたのに、実際の契約は異なっていたということがあります。

不動産会社側からすれば、経年とともに周辺状況が変化するのだから、家賃を下げないと入居者が減ってしまうというスタンスです。そのために契約書に「2年ごとに賃料の改定を行う」などの条文が盛り込んでいるのです。

ただこの契約内容をどこまで丁寧にオーナーに説明したのかという道義的な問題と疑問が残ります。

保護される弱者が不動産会社?

一般的な大家と店子の関係というと、資金的にも権力面でも圧倒的に大家が優位な立場です。実際に力の差があったため、借地借家法によって、立場の弱い店子は保護され、かろうじて力の均衡を保っているのです。

ところがサブリース契約においては、店子は不動産会社です。サブリースを扱う不動産会社は、全国大手の会社がほとんどですから、一個人にすぎないオーナーとの力の差は歴然としています。しかし借地借家法によって保護されるのは、不動産会社の方なのです。

先の賃料改定の問題にしても、もし契約書に賃料改定の条項が記載されていなかったとしても、借地借家法には「近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる」とされているので、不動産会社は「店子の」当然の権利として、大家に賃料値下げを申し出ることができるのです。

また通常の大家と店子の関係を見れば想像がつきますが、店子は自分の都合で勝手に引越しをすることができます。「家賃収入が減るから、出ていくな」という権利が大家にないことは、誰が考えても分かります。

これと同じことが、サブリース契約でもいえるのです。不動産会社は店子として解約予約をすれば、いつでも契約解除をすることができるのです。このことだけでも、30年保証がいかに不安定な約束事であるかが分かります。

しかも大家からは解約ができません。そんな権利を簡単に認めたら、店子はいつ追い出されるのかと怯えながら暮らすことになります。同じように、オーナーは不動産会社に対して解約を申し出ることはできないのです。

サブリース契約のメリット

トラブルが多発しているサブリース契約ですが、国土交通省の発表によると、2018年6月末時点で、賃貸住宅管理業者登録制度に登録した事業者の管理物件約725万戸のうち、約41%がサブリースにより運営されているとされています。これだけ普及している背景には、やはり多くのメリットがあると考えられます。それではどのようなメリットがあるのでしょうか。

経営が安定する

サブリース契約で一括借り上げされているため、空室や家賃滞納に悩まされることがありません。収入が一定であるために、ローンの返済の心配をすることもなく、安心して日常生活がおくれます。

管理の手間が省ける

サブリース契約では、賃貸住宅の管理運営は不動産会社が行うことになっています。このためオーナーは、入居者の規約違反や入退去などへの対応をする必要がありません。入居者に関わる面倒なトラブル対応にも一切関わることはありませんから、精神的な負担が軽減できます。

確定申告が楽になる

賃貸収入を管理する場合、自らが大家をしていると、毎月の収入が異なってくることから、出納簿の記録もこまめに行う必要があります。サブリース契約をしていると、毎月の収入が一定なので、確定申告の作成作業が簡素化できます。

入居者の選定に悩むことがない

自らが大家の場合は、どんな人を入居させればいいのか、あれこれと悩むところです。サブリース契約においては、入居者の選定は不動産会社が行いますから、入居者の身元確認など複雑な問題に絡むことがなくなります。

サブリース契約のデメリット

サブリース契約を理解するためには、デメリットも押さえておく必要があります。

家賃収入をすべて回収できない

せっかく不動産投資として、自分の資金をつぎ込んだ賃貸住宅であっても、サブリース契約を結べば、全家賃の10%~20%は不動産会社の手元に渡ってしまいます。また入居者にとっては、実態はどうであれ、大家の立場にあるのは不動産会社ですから、入居時に通常受け取る敷金や礼金も、通常は不動産会社に渡ります。

最初は収入がない

サブリース契約では、通常最初の3カ月までは、入居者募集期間として家賃の免責期間が設定されています。このため、この期間は不動産会社からの収入が、まったくないのです。入居者が早々に決まれば、この期間の家賃は、まるまる不動産会社のものになるのです。こうした契約を結ばざるを得ない点が、サブリース契約のデメリットといえます。

原状回復費用が必要

サブリース契約においては、物件維持に必要な費用として、物件の原状回復費用や修繕費がオーナー負担になる場合があります。しかも、これらの施工請負が不動産会社の指定会社に限定されていることがあります。このようなケースでは、工事請負費が一般的な価格よりも上乗せされている可能性があります。

まとめ

サブリース契約の最大の問題点は、契約相手が借地借家法で保護された「弱者」の立場になり、あらゆる権利が行使できることです。

総合的に考えて、サブリース契約保結ぶという選択をする場合も、オーナーが圧倒的に不利な立場であることを十分に認識しておく必要があります。

実家が空き家になった後の土地の有効活用は、売却する方法もあります。売却が困難だと感じたら、買取専門の不動産会社に買い取ってもらう方法もあります。何を選択するかは、メリットとデメリットを比較しながら慎重に検討しましょう。